アイデンティティとは、個人または個人を他者とは異なるものとし、それによって自分自身を識別することを選択する、資質、信念、または全体的な特徴や状態のことである。それは民族的、宗教的、文化的、性的、あるいはこれらの組み合わせや他のものかもしれない。特に集団的アイデンティティは社会的構築物であり、そのアイデンティティを構成する人々が自分自身をどのように認識しているかという現実と一致している場合もあれば、一致していない場合もある。アイデンティティの政治化とは、政治的な選択と決定を行う際に、当該個人または集団が、他の個人または集団が、社会政治運動が、あるいは国家が、アイデンティティを考慮に入れるという政治的選択を行うことである。アイデンティティの政治化は、必然的に差別をもたらすか、あるいは差別と同等でさえある。というのも、アイデンティティに基づく差別をしないという選択は、アイデンティティを政治から切り離すこと、すなわちアイデンティティの非政治化を意味するからである。アイデンティティを政治化する例としては、政治的イデオロギー、政治運動、あるいは国家が挙げられる。

• 個人または集団に対して、そのアイデンティティに基づき、尊敬や善意を抱いたり、敵意や偏見を抱いたりすること。
• 個人または集団が、何らかの点で他者より優れている、あるいは劣っている、あるいは特定の権利や特権に値する、あるいは値しないと、そのアイデンティティを根拠に見なしたり主張したりすること。
• アイデンティティに基づき、権利や特権（教育、労働、住居、土地の所有、移動の自由、居住、市民権など）を与えたり、与えたりしないこと。
• 特定のアイデンティティに対して排他的または準排他的であること、またはそれを主張すること。

このような犯罪に対して、「人権」などという法治主義的、道徳主義的なアプローチを採用するのは不十分である。なぜなら、犯罪を引き起こし、正当化し、または可能にした政治的プロジェクトを裁くことなく、犯罪やその加害者を裁くことで、病気ではなく症状を治療することになりかねないからである。実際、アイデンティティを政治化するナショナリスト・コロニアリスト・モデルは、以下の理由から有害でしかない。

• 社会はさまざまなアイデンティティを持つ個人によって構成されているため、アイデンティティの政治化は、それが起源となり、創り出され、標的となり、そうでなければ相互作用する社会を分断することしかできない。アイデンティティを政治化することは、対立する、さらには戦争する、派閥、宗派、国家を生み出すだけである。
• アイデンティティは社会的構築物であり、アイデンティティ・グループが実際の利益集団（例えば、実業家、農民、学生、低所得世帯など）でない以上、社会のアイデンティティ主義的区分は、市民や利益集団の実際の利益と一致せず、その結果、社会の実際のニーズに取り組まない、あるいは一致しない政治的物語、言説、プログラム、政策につながる。
• アイデンティティの政治化は矛盾に満ちている。アイデンティティを政治化することを選んだ政治運動や政治機構は、アイデンティティを定義しなければならないという重荷に直面し、おそらくは以前には存在しなかったか、あるいはわずかに存在していた社会的構成要素を作り出さなければならないことさえある。
• アイデンティティの政治化は制御不能に陥るかもしれない。アイデンティティは私たちを「他者」から引き離すものであるため、ある特定のアイデンティティ主義的集団が他者に対して優位に立つと、その集団自体が細分化され、互いを「他者」とみなすようになる。

もちろん、上記はイスラエルにも当てはまる。イスラエル国家では、ユダヤ人非国民と非ユダヤ人非国民、ユダヤ人居住者と非ユダヤ人居住者、ユダヤ人国民と非ユダヤ人国民の間でアイデンティティに基づいて隔離されている。シオニズムによるアイデンティティの政治化を批判することなく、パレスチナ人の権利の保証や、イスラエルやイスラエルの指導者の犯罪に焦点を当てる政治的アプローチが欠けている。マロン主義、アラブ主義、イスラム主義もその一例である。アイデンティティの脱政治化、すなわちパレスチナにおける非宗教的、民主的、非アイデンティティ主義的国家への移行に向けた政治プログラムを提唱する中で、「ひとつの民主国家」構想は、シオニズムのみならず、パレスチナという国境を越えて、植民地的国民国家モデルとそのイデオロギー的基盤に対する根本的なアンチテーゼとなる政治モデルを提案している。